日韓大討論(1)
[西尾幹二×キム・ワンソプ]
(キム)韓国で新たな歴史観を試みるのは簡単ではない。討論では済まず内戦になってしまうだろう。そこで日本の支援を期待したが、実は韓国の反日教育が日本の反日勢力に支援されて行われていることを知って衝撃を受けた。韓国の反日意識を失くすには、先ず日本国内の間違った歴史観を変えなければならないと思う。
(西尾)日本が敗戦によって1868年以降に取得し、国際的な承認も得ていた領土まで放棄させられたのは、正当性に欠けるものであり、連合国側による日本に対する差別である。満州は1930年以降に取得し国際的な承認を得ていなかったが、沖縄、台湾、サハリン、朝鮮、千島列島、ミクロネシアは正当に取得されたものである。
(キム)戦後の日韓国交樹立交渉で日本の代表であった久保田貫一郎は、サンフランシスコ講和条約締結前に勝手に朝鮮を独立させた米軍の行為は国際法違反であると主張していた。日本は朝鮮に執着心があったようだが、韓国人は何故敗戦国の日本が分断されず、朝鮮が分断されなければならなかったのかという不満を持っている。
(西尾)日本が分断されなかったのは、トルーマンがその交換条件として大陸にいた日本兵80万人を強制労働につかせることをスターリンに約束したからである。日本に知らされたのは戦後30年経ってからである。その結果シベリアで10万人が死亡した。
(キム)併合時代の朝鮮人は日本軍の兵士になりたがっていた。1938年の志願兵募集では406人の枠に対して2946人、翌年には613人に対して12000人余、1943年の戦争たけなわの頃には6300人に対して30万人余の応募があった。この事実を知ったら韓国人は衝撃を受けるだろう。もちろん強制されたのではない。
(キム)戦時中の朝鮮人は日本人と同じ敵を敵として戦った。しかし戦後は手の平を返したようにそれを忘れたふりをして戦勝国のように振舞った。日本と独立戦争を戦って勝ったのだと言い出し、歴史教科書にもそう書き始めた。しかしこれは明らかに嘘だし、義理を欠く行為だ。例えばオーストリアはドイツに対して決して戦勝国として振舞ってはいない。戦後の日韓の歴史認識の争いはこの嘘から始まっていると思う。
(キム)日本の日本人に対する反日教育は異常だ。韓国の反日は一種の苛めだ。悪いことをみんな日本のせいにしている。日本から抗議がないから図に乗って歯止めが効かない。日本が抗議すれば日本悪玉論は消えてゆくだろう。韓国の教育では朝鮮民族が日本に同化したことを教えていない。日本人が朝鮮人を苛め、苦しめ、殺したとだけ教えている。しかし満州では朝鮮系日本人として満州人を支配し、満州人に反発もされた。また、泰緬鉄道建設に動員した英軍捕虜を苛めたのは朝鮮系日本兵だったし、彼らは白人を好んで迫害した。このようなことは韓国では一切教えていない。むしろ逆のことを教えている。
(西尾)日本でもGHQによりアメリカに都合の良い教育がなされたが、戦中・戦前の状況を知っている年長の子供はそれを信じなかった。しかし1985年頃から戦後世代が教壇で多数を占めるようになり、歴史教育がおかしくなってきた。GHQと共産主義者の援護を受けて日教組が一方的な偏重教育を行うようになって以降のことである。
(キム)韓国でも「洗脳教育」が行われている。他の考え方に接する機会がないので、内容を疑うこともない。そのため他の解釈もあるんだということを早く知らせることが必要。
(キム)朝鮮人は民族というものを考えずに来た。日本人は日本民族としてのアイデンティティを持っているが、それは長い間固有の社会・文化・風俗・伝統を守ってきたからであって、地球上では稀だ。韓国の民族の歴史は長いと考えられているが、実際は1392年に始まる李朝以降の500年位。その前は高麗時代であったが、半島にあった国ではなく大陸にあった国だと思われているので、民族と言うことをあまり考えたことがない。しかし日本人の民族アイデンティティは世界最強と言っていいほどに強い。
(西尾)日本人は外国人に対しても、自分達と同じように単一のアイデンティティを持っていると思いがちである。
(キム)韓国も500年の民族としての歴史があるから、多少は単一のアイデンティティを持つ傾向はあるが、日帝36年間の方がインパクトが強かった。日本文化と共に近代資本主義や議会制民主主義が移植されたからである。しかし神道や天皇については拒絶反応があった。強固な儒教の伝統が浸透していたからだ。
日本人は韓国人も他国に侵略されれば怒って独立運動に熱心になるだろうと考えるが、日本人ほど強いアイデンティティを持っていない韓国人はそうは考えない。
日本は隔離された一つの世界だ。しかしそのせいで国際化が妨げられているとも言える。日本人はもう少し自身の特殊性を自覚すべきだ。